John Coltrane / Giant Steps

May. 1959 Released

今回は初めてジャズの紹介をするのだが、実は自分が10代の時に一番魅了された音楽が1950年代から60年代後期にかけて巻き起こったモダン・ジャズのジェネレーションだ。そして、今回紹介するのは私が一番最初に買ったジャズのレコード(レコード単体で挙げれば「泳げたいやき君」だが・・)ジョン・コルトレーンのジャイアント・ステップスで、当時はチンプンカンプンでわけのわからない音楽。あやうく燃えないゴミへと分別してしまうところだった。当時私は16歳だったが、理解しようと無理やり聴き続け、サントリーREDをストレートで飲みまくったが、それでもダメだった。

まるでタネの明かされた手品のように、それが一気に理解できたのが翌年にニューヨークに訪れた時のこと。激しく脈を打つ鼓動のように流れるリズム・・・ニューヨークという街全体が心臓部となりシンバルやウッドベース音、サックス音がグルグルと血管のように循環する。アメリカの片田舎や、ましては日本ではとうてい生まれる背景がない彼のサウンドがニューヨークへ行ったことによって鮮明に映り始めると、そこから一気にコルトレーンの世界へ浸かっていった。

海賊盤も含めると、数多くの作品が出回る中、コルトレーンの転機となっていると考えられるのが「ジャイアント・ステップス」であり、それまでのジャズの歴史に縦線を引くうえでも、このアルバムが時代に貢献している比重は大きい。近々までマイルスのバックで地味にブローしていた人物とは同一とは思えないほど飛躍し、このレコーディングの行われた1959年の前年には「The Last Trane」という、このアルバムのサウンド性に道しるべを仕掛けたアルバムをリリースしているが、「Giant Steps」によって試行錯誤された独自の理論が身を結び、その後のコルトレーン・サウンドを決定づけ、他界する60年代後半のフリージャズへと地図を成形している。

とてつもなく早いコード進行、刻みにくいリズム、口ずさめないメロディーなど一般のポピュラーな音楽とはかけ離れ、まるでピカソが描いた絵画のように、コルトレーンのジャズが最も芸術性を帯び、自分の音楽を信じて突き進んでいく皮切りとなった記念すべきアルバムである。

それまでモダン・ジャズでも比較的ソフトなイメージだったピアニスト、Tommy Flanaganや、長期に渡ってコルトレーンを支えたベースのPaul Chambersが、当時どんな気持ちでこのアルバムの制作に携わったのかを考えると、非常に興味深い。(ドラムスのArt Taylorは、まだ新鋭的なことにチャレンジするタイプだったと考えるが・・・)スポーツに言いかえれば、卓球の選手が明日から大雨の中でテニスの試合に出るくらい過酷なはずだ。
収録曲にはタイトルソングのGiant Stepsを始め、Countdown、Syeeda’s Song Flute、Naima、Mr. P.C.とどれを選んでも独創性に溢れた世界観に広がり、今現在こうして聴いていても、そして今後50年後に聴いたとしても全く色あせることがない生きた音楽として残っていくに違いない。

おすすめ度
☆☆☆☆☆

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