Archive for the ‘R&B’ Category

Baby Face / For the Cool In You

Wednesday, March 10th, 2010

Aug. 1993 Released

1959年インディアナポリス生まれ、本名Kenneth Brian Edmonds。
ファンク界のカリスマ・ベーシストBootsy Collinsのバック時代に彼からBaby Face(ベイビーフェイス)と名付けられたのは、あまりにも有名な話。ミュージック・ビジネス界で大きな成功を収めているL.A. Reidと共にThe Deeleというバンドで7年間活動し、数曲のヒットを放つ。その後のプロデュース活動においての活躍ぶりは皆さんの知る通り。90年代のR&Bシーンはベイビーフェイスが作った楽曲で溢れかえり、完全に90年代前半をジャックした。テディライリーと張り合い、非常に良い時代を築き上げ、シーンの発展に貢献したことは今後の歴史に語り継がれるだろう。

今回ピックアップしたのは、その絶頂期であった93年にリリースしたソロ3作目「For the Cool in You」という作品。前年にToni Braxton(トニ・ブラクストン)のデビュー作「Another Sad Love Song」を手掛け、その後長年に渡って彼女のイメージを失恋の女として色付けしてしまった。トニは今年2010年にカムバックしそうなニュースが飛び込んでいるが、長い歳月が過ぎた今でもそのイメージから脱却することは難しいだろうな~

このアルバムを作っていた最中にも膨大なプロデュース依頼が山積みになっていたはずだが、その中で作り上げた本作の素晴らしさは信じ難いものがある。完全に時代を超えて引き継がれるだろう「When Can I See You」を始めとするラブソングの数々。ちょっと残念なのはJoe Cockerの「You are so Beautiful」カヴァー曲だが(あの曲でジョーを凌ぐ人はいないので・・・)それでも当時はかなり新鮮だった「Never Keeping Secrets」に見られる歌詞のノセ方は(うまく説明できないが、メロディーに貼りつく感じ)はその後様々なアーティストがマネしようとした。

アルバム自体は最高位で16位とセールス自体は良くないが、94年のグラミーアワードで本作は高い評価を受け「Best Male R&B Performance」に輝く。その直後は手掛けるBoyzⅡMenやTLCで爆発的、かつ記録的なヒットのラッシュ!彼の人生でもっとも華やかな時期であったことは間違いない。

おすすめ度
☆☆☆

Conya Doss / Love Rain Down

Wednesday, February 24th, 2010

Dec. 2006 Released

オハイオ州クリーブランド出身の女性シンガーソングライター。2002年に「A Poem About Ms. Doss」でデビュー。以後2004年に「Just Because」、2006年に「Love Rain Down」、2008年に「Still」の合計4作品をリリース。3作目まではEric Robersonなど、良質のR&Bアーティストを送り出しているUKの大手インディーズ・レーベルDome Recordsより作品のディストリビューをしていたが、08年になって自主レーベルに切替わり、現在は地元を中心にライブなど音楽活動を行っている模様。自身の持つ記録はBillboardのR&Bチャートで08年に「What I’d Do」がマークした79位が最高。認知度という意味ではアメリカやヨーロッパ、日本などの一部のマニアックなソウル・ファンのみに流通した存在といえる。話は変わるが、何にでもマニアック(もしくはコア)なファンというのは一般の流行を追う派と比べ、裏切ることをしない。かつては私も、彼女の存在を知ったデビュー作からは、その後の作品の良しあしに関わらず、アルバムを購入し続け、コーニャの成長過程を見守っている。そして、今回紹介する「Love Rain Down」を初めて聴いた時は、本気でクリーブランドまでライブを見に行こうかと考えたほど惚れ込み、まるでミシュランの三つ星状態で彼女を欲し、彼女のサウンドを今すぐ味わいに行きたいと熱望したのを覚えている。

彼女の音楽を当時もてはやされていた言葉で例えると「ネオ・ソウル」というのが、ありきたりの表現なのだが、ひねくれ者の自分にはどうしてアメリカを含めたライナーノートが、そのカテゴリーに無理矢理入れたがるのかが理解できなかった。初めてこのアルバムに針を落とした時に、よく知っている暖かいサウンド感を感じたのだが、後にプロダクションを調べると、前作に引き続き制作の大黒柱となっているMyron(マイロン・デイヴィス)とJosh Honigstock(ジョシュ・ホニストック)から成る、ジャズ理論を元にソウルの温度計を2.5度上昇させる特有のサウンド感をもったチームがソングライティングを担当していることに気づく。生楽器を多用し、暖かくやさしく響き渡るメロディーの裏側に、体内に蓄積された彼女のエネルギーが静かな爆発を繰り返す様が映し出され、オーディエンスを見事に金縛りにする。

聴けば聴くほど新しい発見に満ち(それが本当の音楽でしょう!)、今こうやってこのレビューを書きながら聴き返しても全く時代を感じさせない。そう思うと、やっぱり生で彼女の音楽が見たくなってきた!今度こそ行っちゃおうかな~マジで・・・ ・

このアルバムで一番のお気に入り「Tell Me Why」のライブです↑

おすすめ度
☆☆☆☆

Faith Evans / Faith

Tuesday, November 10th, 2009

Oct. 1995 Released

バッドボーイ絶頂期の95年にメアリーJブライジと比較され、競うように出現したアーティスト。年数が経過するにつれ個々の存在を認められたが、当時一人勝ちだったメアリーにとって、レーベルメイトにして最強のライバルだったのは間違いない。東西ラップ戦争で被害を受け、あの世へ先立ったノートリアスBIGの最愛の妻としても業界では知られている。

個人的にこのアルバムは生涯で3本の指に入るベスト作。2009年11月7日と8日にTokyo Midtown(東京ミッドタウン)のBillboard Live(ビルボードライブ)に初来日したことを記念し、ライブレポートも含めたレビューを書かせていただく。

ライブは1時間ほどだったろうか、引き連れてきたバンドメンバーはDJのハリケーンを始めギター、ドラム、ベース兼シンセサイザー、鍵盤の5人組み。全員30代前半くらいまでの若い黒人たち。残念なことにファイス・エヴァンスの音楽で最大の聞きどころであるバックボーカルがカラオケだったのが悔しい。彼女の場合バックボーカルは3人は必要なので、今回のツアーには予算的に無理だったのだろうが、この点の悔しさを除けばパフォーマンスは素晴らしいモノだった。

2005年の「The First Lady」からリリースが無いので、それまでの4作から曲を披露してくれたが、ライブ始まりの2曲目でヒット曲「Love Like This」(セカンドアルバムのKeep the faithに収録)を歌出だし、会場が沸いた。商業的な意味でこういったアップテンポはヒットを狙えるが、彼女の持ち味はやはり聞かせるミディアム・スローの歌モノ。今回紹介するアルバム「Faith」にも収録されている「Soon as i get home」を歌う曲紹介では『この曲には特別な想い入れがあるの・・・』と言っていたが、素晴らしい歌詞と情熱的な歌はCDでも充分素晴らしいのだが、ライブで見れたことで、曲中は本当に心が踊った。

そして、全てのこの世の音楽において、私の人生で最も痛烈にカンジル曲(本当は明かしたくなかったのだが・・・)が「Come Over」。受身の女性的な曲で男の自分が何故ここまで好きなのかは分からないが、この楽曲はトンデモナイ!この曲を歌う彼女に惚れ込んだのは勿論、制作者のChucky Thompson(チャキートンプソン)も、歴代R&B Producerの一人として、これからも愛し続けるだろう。彼女のボーカルアレンジはストーリー性に満ち、場面ごとにイメージ画像が頭をグルグルまわり(英詩がわかればですが・・・)絶頂へ連れて行ってくれます。ライブでこの曲が見れた時は『これでオレも安心して死ねるな・・・』などと考えてしまいました。

彼女がライブ中に話していた『こんなに離れた日本という国で、これほどのファンがいて、この場で触れ合えるなんて、この気持ちが伝わるかどうか分からないけど・・・・言葉にできないほど嬉しいわ』と言っていたのが忘れられませんな。今回のライブを見て、一つハッキリ分かったことがあるのですが(今までも分かってはいたが・・)彼女はゴスペルシンガーだということ。パーティーソングやメイクラブソングを除いて、彼女が歌を向けている方向はGODですよ。多分、理解していただけないかもしれませんが、そういうことです。ただの歌えるシンガーではありませんでした。

おすすめ度
☆☆☆☆☆!

Zhane / Pronounced Jah-Nay

Saturday, November 7th, 2009

90年代を代表するR&Bグループ・デュオ。Jean Norris(ジーン・ノリス)、Renee Neufville(リネー・ネーフヴィル)の二人はフィラデルフィアのテンプル大学時代のルームメイトで、フレッシュ・プリンス(現ウィル・スミス)&
DJジャジー・ジェフのヒット曲「リング・マイ・ベル」のバック・コーラスをプロでの初仕事に、一気に世の中に知れ渡った。正式な契約は当時クイーン・ラティファが主催していたフレイヴァー・ユニットからで、ニュージャージ州を代表するNaughty by Nature(ノーティーバイネイチャー)のKay Gee(ケイジー)が全面的にバックアップ、アルバムからの先行シングル「Hey Mr DJ」は全米シングル・チャートで6位まで登りつめたヒット作となる。

彼女たちほど音楽的に才能のあるアーティストが、ヒップホップ・アーティストにプロデュースをされるというのもおかしいが、実は2人とも音楽一家に育ったエリートミュージシャンであり、ジャズやクラシックを長年に渡って勉強してきた経緯を持つ。

恐らくこのアルバムは90年代に名を残すアルバムとなったが、運の悪いことにその後に続くリリースでは、レーベルの諸問題を抱え苦難の道のりを乗り越え、3年後のリリース「Saturday Night」にこじつけている。発売元であり、クイーン・ラティーファの所属先モータウン、フレイヴァーユニット、このアルバムにクレジットされたケイジーのイルタウンが複雑にからみ、彼女達の才能を開花させる妨げになったことは事実である。

事情はどうであれ、このアルバムの素晴らしさは歴史に残る価値を持ち、ミュージシャン・シップに優れたアーティスト「ジャネイ」とストリート出身のヒップホップ・アーティスト「ケイジー」のコラボレーション作として大成功を治めた大作である。

個人的に2度ほど来日ライブに行ったが、彼女達のパフォーマンスは「音楽で人を楽しませる」ことに最高に長けており、私の体験ライブの中でも5本の指に入るほど思い出に残っている。

最近ではプロのミュージシャンとして活動しているようで、ジーンに関しては数年前にブルーノートに来日したトランペッターのロイハーグローブ(ジャズ)のキーボーディスト&バックボーカルで見かけることができた。

彼女達がレコード会社からの何のしがらみも無く、自由に制作した作品を一度でいいから聞いてみたかったというのが、私の本望であったのだが、その夢は叶うことがなかった。

おすすめ度
☆☆☆☆

Brian Mcknight / Anytime

Thursday, October 15th, 2009

Sep. 1997 Released

2009年10月現在でクリスマス・アルバムを含む11枚をリリースしているブライアン・マックナイトだが、今回紹介したいのは97年に発表したサードアルバム。全米アルバム・チャートで13位、R&Bアルバム・チャートでは1位を獲得。個人的にはコマーシャルに走り過ぎていて好きではなかった曲だが、収録曲の「You Shuuld be mine」は当時絶頂期だったバットボーイの専属プロデューサー、スティービーJとデビューを控えていたケリープライスが制作に加わり、当時敵なしのメイスがラップで参加、何とかシングル・チャートで17位までこじつけた曲。彼のキャリアでは、99年の「Back at one」(こちらは彼らしさを思う存分に発揮した曲で、全米1位を獲得している)に次ぎ、通信簿上では2番目の成績となった。

私自身彼の大ファンで、全てのアルバムを所有しているが、この作品はCDのデータがおかしくなるほど何度の聞き、個人的に思い入れの強いアルバムであるが、本作について彼に直接インタビューした時のエピソードも僅かながら記憶に残っている。それはアメリカを代表するソングライター、ダイアンウォーレンについて聞いたときのこと。私の主観では、あれほど偉大なライターなのだから、さぞかしスマートな人物だろうと予想してていたのだが、ブライアンから返ってきた言葉は「彼女は相当クレイジーな人物だよ」とのこと。どうクレイジーだったのかは忘れてしまったが、本アルバムでも「Show me the way back to your heart」をブライアンのために書き上げているが、曲の素晴らしさ、歌詞の奥深さを知る限り、彼の言葉は信じられなかった。

このアルバム以降も素敵なアルバムを定期的にリリースしているが、残念ながら爆発的なヒットはないながらも、息の長い、本物志向の音楽家として私のような一人のファンを喜ばせてくれる彼の存在に感謝したい。

現在、ニューアルバム「Evolution of a man」が発売されたばかりだが、こちらのレビューにかんしてはCDを購入し次第、以下のサイトで書かせていただくのでご参考までに・・・・

おすすめ度
☆☆☆☆

R. Kelly / 12 Play

Monday, September 14th, 2009

Nov. 1993 Released

92年にデビューしたR. Kelly(アール・ケリー)はデビューアルバムをPublic Announcement(パブリック・アナウンスメント)というグループのメインとして「Born Into The ’90s」というデビュー作をリリースし、業界のスタート地点に立った。そこからは皆さんが知るような世界的スーパースターへの階段を登っていったのだが、多分私はR.Kelly のデビュー時代のライブを生で見ることのできた数少ない日本人だろう。当時、ハーレムで一人暮らしをしていた私が、彼の存在を知ったのは、なんと隣の住人が爆音で鳴らすバラード。床はミシミシ、壁が崩れ落ちるほどの爆音で、自分もかなりうるさかったハズなので、気にはしていなかったが(実際、ヤツとは音量で張り合っていた)その隣人がいつも聞いていたのがR kellyのデビューアルバムから2nd シングルとなった「Honey Love」だった。

今回紹介するアルバム「12play」は2作目となり、彼が初めて自分ひとりでプロデュースをした作品。夜も昼も寝ずに制作に没頭したことだろう。あまり知られていないが、同じ時期に母親の他界などが重なり、そのことを歌った収録曲「Sadie」(オリジナル曲はスピナーズ)は母親への愛情を露に表現した、痛々しいボーカルを聞くことができる。このアルバムを皮切りに「愛の伝道師」と呼ばれ、セクシャルな表現で露骨に歌う第一人者、つまり収録曲にある「SEX ME」のような歌が時代をもてはやしたことも記憶に深いところだ。

アルバムのハイライトは世界的なヒットとなった「Bump n’ Grind」。ビルボードのシングルチャート1位、世界のチャートを総なめにしたのだが、印象的なのはその歌詞で、ちょっと自分の子供には聞かせたくないと思うほどの内容。個人的にそれが彼の魅力とは思わないのだが、このヒットを機にどんどんセクシャル路線に乗ってしまったことは、少々残念である。

ただ現在までのアルバム単体で考えたときに(2009年9月時点で11枚をリリース)、この作品にたいする彼の想い、まだ貧乏でハングリーだったアーティスト魂をヒシヒシと感じることは紛れもない事実。彼にとっても一番思い入れの深いアルバムであることは間違いないだろう。

昨年(2008年)は事実上、インターネット上の流出でお蔵入りとなってしまったが、この作品の続編「12play:4th Quarter」が発売されるはずだった。期待をしていただけに残念ではあったが、それに匹敵するアルバムを届けてくれることを信じて、今は応援していたいと思う。

おすすめ度
☆☆☆☆

K-ci & JoJo / Love Always

Thursday, September 3rd, 2009

Jun. 1997 Released

1991年に衝撃的なデビューを飾ったJodeci (ジョデシィ)の4人メンバー中、2人の兄弟が放った初のデュエット作が、今回紹介する「Love Always」。Jodeci のデビューは私自身ニューヨークに在住だったこともあり、ゲットーの若いコ達の熱狂ぶりは今だに鮮明に覚えているが、それは今度Jodeci のアルバムを紹介する時にゆっくりするとして、セクシャルな愛を歌うJodeci に対してK-ci & JoJoが放ったアピールは、ズバリ大人の愛。Jodeci に熱狂した若いファンが数年を経過するごとに、共に大人になっていたことを考えると、この戦略はドンピシャ当たるのもうなずける。(もちろん、自分もこの戦略に踊らされた。)グループ時代はストリート系のファッションだったのに対し、スーツを身にまといイメージも大幅に変え、全体的にレイドバックしたアルバムは彼らの予想をはるかに超えただろう、世界的ヒットを記録。Billboard のアルバムチャートで最高6位、R&Bチャートでは2位。そしてグループ時代を含め最大のヒット曲「All My Life」はついにングル・チャートの1位を獲得、世界中で大ブレイク。(ちなみにJodeci 時代の最高記録はスティーヴィー・ワンダーのカヴァー曲「Lately」で4位。)オーケストラをバックに豪快に歌うこのバラードは日本の結婚式にも大いに利用された究極のラブソング、今後も引き継がれる歴史に残る名曲だ。

日本にはファンも多く、彼ら自身も日本贔屓で何度も来日しているが、必ずこの「All My Life」でステージの最後を飾り、お決まりのように兄弟でハグをするシーンはファンなら知っているハズ。更に日本盤限定のコンピレーション・アルバムもリリースされているので、興味のある方は是非。

おすすめ度
☆☆☆☆

Amel Larrieux / Infinite Possibilities

Monday, August 24th, 2009

Feb. 2000 Released

Groove Theory(グルーヴ・セオリー)名義での活動を終えリリースしたAmel Larrieux (アメール・ラリュー)の記念すべきソロアルバム。ビルボードの総合アルバム・チャート最高79位、R&Bアルバム・チャートで21位を記録した。

グルーヴ・セオリーは東海岸を中心に比較的コアなR&Bファン層を持つグループで、95年のアルバム「Groove Theory」から出世作「Tell Me」が全米シングルチャート5位を記録、他にも数曲をヒットさせた。2作目のアルバムを制作中にグループは解散。4年のブランクを経てリリースに至ったのが、この作品というわけだ。2009年8月現在は通算4作のアルバムをリリースしているが、そのアルバムも彼女のオリジナル性を重視した音楽的要素を追求した作品、ソウルでもジャズでもない、業界随一の個性を放っている。

この作品の素晴らしいところは、彼女自身によるセルフプロデュースもとで芽を育ませている個々の楽曲群。ヴォーカル・ラインはインスピレーションで型取られ、アメールの思惑通りに右へ左へと旋律がカーヴする。既に夫となっていた共同制作者ラルー氏のサポートも計り知れないところだが、母親という役目を両立し、アーティストしての本能を開花させた苦労作だ。

アルバムからシングルカットされた「Get Up」は、以前から交流のあったRoots(ルーツ)の影響を思わせたが、その後のリリースを回想していくと、あの音こそが彼女の持つ切り札のカードであり、持ち前のスパイスであることに気付く。曲はビルボード・チャートで97位と商業的には決して良い結果ではなかったが、そもそも彼女の音楽自体がそのような道を選択していない上に、そこにしがみつくファンが逆に彼女を手放すことはない。

おすすめ度
☆☆☆

Whitney Houston / Whitney Houston

Wednesday, August 12th, 2009

Oct. 1985 Released

US音楽業界のドンと言っても過言ではない、Clive Jay Davis(クライヴ・デイヴィス)に見出され、このアルバムをデビュー作に80年代の象徴となり、90年代にはマイケルなど共にべテランの域に、2000年に入ると大御所へと成長した元祖ソウル・ディーヴァ。筆者がオン・タイムで聞いた初めてのブラコン(ブラック・コンテンポラリー)の大作がコレでした。

ホイットニー・ヒューストンがリリースしたアルバムは全て聴いていますが、このデビュー・アルバムでは、まだ若い彼女が純粋な気持ちでストレートに歌う姿が鮮明に映し出されています。その後は時代と共に彼女の音楽も変化して行きましたが、当時22歳で成し遂げたこの名作は永遠に語られることでしょう。

アルバムからは4曲のビック・ヒットが生まれましたが「How Will I Know」、「Saving All My Life For You」、「Greatest Love Of All」の3曲が全米のシングル・チャートで1位を獲得、「You Give Good Love」も最高3位、アルバム自体も1位を記録し、グラミーアワードでは「Saving All My Life For You」がBest Female Pop Vocal を獲得するという快挙を成し遂げました。余談ですが、この曲のオリジナルは Marilyn McCooとBilly Davis Jr. が70年代に書いた楽曲にホイットニーが新たな命を吹き込んだとされています。

その他にもジャーメイン・ジャクソンがデュエットした楽曲が2曲、テディ・ペンターグラスとのデュエットでは事前にヒットとなり、元々話題性に富んだ作品ではありましたが、ナンと言っても心に残る彼女の歌声が人々を引きつけ魅了したことは間違いないと思います。

2009年の8月現在で彼女は46歳。9月には新作「I Look to You」がリリースされます。音源が入り次第ソウルピーナッツのNew Releaseコーナーにて紹介させていただきます。

おすすめ度
☆☆☆☆

Eric Roberson / The Vault-Vol.1.5

Tuesday, July 28th, 2009

Dec. 2003 Released

アメリカ国内に溢れる無数のインディーズレベルから運良く日本のレーベルを通じてソコソコのヒットを飛ばしている(と言っても、ごくマニアの中だけだが・・・)こちらのアーティストは、ニュージャージをホームタウンに活躍するソウル・シンガー兼ソングライター。ミュージック・ソウル・チャイルドを筆頭に広まった現代フィラデルフィア・ソウル(フィリーソウル)。そしてソウルチャイルドのデビューアルバムで楽曲の提供をした経験に始まり、影ながら素晴らしい仕事をこなす一面も評価されている。このアルバムはデビュー作のリメイク版(The Vault-Vol.1がオリジナル)になるが、現在は4枚だろうかエリック自身の名義でアルバムがリリースされている。

彼のサウンドの素晴らしいところは、楽曲を自身で手掛けるだけあって、独創性で生々しい世界観の描写、何も恐れることなく音のクリエイトに身を捧げるアーティスティックでひたむきな姿勢だ。その一例ではあるが、このアルバムでも共に制作を手掛けるハウス界のオシュンラデとのコラボレート。まだ完成形ではないが、実に実験的なフィーチャーソウルの岩石と言える。

最近は大きな仕事ばかりになってしまい、ある意味面白さを失ってしまったが、フィリーソウルの創設に携わったプロデューサーチーム、元A Touch of Jazzのアンドレ・ハリスとヴィダル・デイヴィスが、最も先進的なサウンドを生み出していたのも、このアルバムがリリースされた2000年初期。本アルバムの2曲目ではアイザック・ヘイズの「Close To You」をサンプリングした曲が印象深い。(最近ではダークチャイルドがJ.Holidayのデビュー作でも使っていたっけ・・・)

最近はインターネットを使った流通が進化したおかげで、このようなインディーズ系のアーティストにもチャンスが巡っているが、情報が大量に散乱する中で本当に自分に合った素敵な音楽を選ぶことが、大変な作業になっていると思うこの頃だ。

おすすめ度
☆☆☆☆

Anita Baker / Giving You the Best That I Got

Tuesday, June 16th, 2009

Oct./1988 Release

1958年1月オハイオ州生まれ。80年代から90年代にかけて素晴らしい歌を聞かせてくれたシンガーの一人。 とは言っても、まだバリバリ現役で彼女に強く影響されている新生シンガーを続々と輩出している事実も承知のとおり、素晴らしい個性と歌いまわしは無二の輝きを放つ。彼女がリリースするアルバムはどれも素晴らしいのだが、今回は当時筆者がニューヨーク在籍時代に強い印象を受けた作品を紹介する。今は無きニューヨークのワールド・トレード・センター広場で彼女がお披露目した短いShow Time。そこに群がった黒人お母さん達の熱狂振りは今でも忘れられない。

このアルバムをリリースした88年、タイトル曲「Giving You the Best That I Got」はBest Female R&B Vocal PerformanceとBest R&B Songがグラミーの2部門を受賞。品格のある大人の女性像を描くと共に、女性ならではの切ない部分もリスナーの心をおもいきりくすぐった。

タイトル曲は勿論、永遠の不滅作となったが、このアルバムのもう1曲の名作が「Jast Because」だろう。一人の男性に向けた一途さを歌い上げた情熱的なこのラブソングは、男性にも受け入れられる曲で、理想の女性にこのような言葉をかけられたら、どれほど幸せか・・・と彼女の世界にグイグイと引き込まれるだろう。音楽って素敵だね!!

おすすめ度  
☆☆☆☆☆

Fantasia / Free Yourself

Thursday, June 11th, 2009

Nov. 2004 Released

2004年のAmerican Idol’s(アメリカン・アイドル)を勝ち抜き見事優勝を果たした実力派。ファイナリストには、後に映画「Dream Girls」でオスカー女優に輝いたJennifer Hudson(ジェニファーハドソン)との激しい競い合いが注目を集めた。

彼女の場合、ずば抜けた個性と歌唱力が評価されたことと、彼女の持つバックグラウンドがアメリカン・アイドル視聴者の心を惹きつけたと言っていい。治安の悪い環境で育つ中、暴力やレイプに苦しみ17歳で未婚のまま子供を出産。歌が全て、歌の中でしか生きるすべを見出せなかった日々・・・優勝決定後にステージで歌った「I Believe」ではアメリカ中で感動の渦が巻き起こった。

まさに今やアメリカが直面している大きな問題・・・若くしてシングルマザーになった同志に捧げたアルバム収録曲「Baby Mama」は、同じような環境で苦しむ女性達に多くの勇気を与えた。現代にもアメリカン・ドリームは存在することを忘れちゃいけない・・と象徴した出来事だったにちがいない。

アルバムには予選でも歌った米国の子守唄「Summertime」も収録。Missy Elliott等がフィーチャーされ、アルバム・チャート最高8位、シングル・チャート1位の記録を放つなどヒット作を飛ばし、商業的に大成功を収めた。

おすすめは2曲目の「Free Yourself」。ここまで感情を歌にぶつけられるのは、彼女以外には成しえない。

おすすめ度
☆☆☆

Heather Headley / Audience of One

Tuesday, June 2nd, 2009

Jan. 2009 Released

牧師の娘としてキューバ生まれた彼女は幼少期より音楽に興味を持っていたようで、4歳の頃にはすでにピアノでコンサートを行っていたという記録がある。本作は2002年にデビューを果たしてから地道に成果を上げ、そしてたどり着くところに戻ってきたといえるゴスペル作。ミッション系の家庭に育った彼女のルーツであり、神への愛を精一杯表現した作品。

ミュージカル女優としてライオンキングやアイーダ等で演じてきた彼女は98年にトニー賞を獲得するなど、ステージの世界での栄冠を手にしている経験が音楽にも強く影響し、歌のストーリー性、想像を掻き立てるような表現力はピカイチ。まさにボクの最近のお気に入りである。

ホイットニーヒューストンを思い出させるような歌唱力(ちょっと例えが古い??)が、80年代のR&Bムーブメントを通ってきた世代には胸に刺さるはず・・・・

今のゴスペル界を代表するSmokie Norfulの参加や、Fred Hammondのカヴァー曲、ゴスペル・スタンダードなどを交え、とてもメロディアスでロマンティックに仕上げたアルバムです。オーケストラのバックも素敵です。

おすすめ度 
☆☆☆☆