Archive for the ‘Jazz’ Category

Etta James / My Greatest Songs

Sunday, January 29th, 2012

1992年リリース作

2011年10月に音楽界から身を引き、2012年1月20日(金)に白血病との合併症のため、あと5日後に迫っていた誕生日を迎える前の73歳でこの世を去った。彼女は1960年から70年代に全盛期を迎え、80年代以降は一部のコアなファン層を除き、残りの人生を地道ながらもライブハウスでの定期公演やソウルシンガーとして頻繁にリリースを繰り返すだけのアーティストとして終わるとも思われていたが、93年に「The Rock and Roll Hall of Fame」いわゆるロックの殿堂入りを果たし、グラミーアワードでは数回に及ぶ受賞も果たした。

そして彼女の転機となったのは2008年12月に全米で公開された大ヒット映画、ブルースの名門「チェス・レコード」を題材にした『Cadillac Records』(邦題:キャデラック・レコード ~音楽でアメリカを変えた人々の物語~)で、ビヨンセがエタ・ジェームスの役を演じたことで、再びシーンへ復帰を果たし、過去の作品に世界が注目するようになった。

以後はTVなどでも彼女を目にする機会が増え2011年11月には最後のレコーディングとなる「The Dreamer」をリリース。

私が個人的に彼女のレコード(レコードの時代です)を買ったのはかれこれ24年前で16歳の時。ブルーズ・シンガーとしてジャニス・ジョップリンが影響を受けたことで、彼女の存在を知りました。ジャニスがカヴァーしていた「Tell Mama」という曲ではライブ映像でエタになりきっているジャニスを見て喜んでいたものです。ジャニスに限らず、そのような影響を受けたアーティストは世界中にDNAを広げ、現在も「真の魂」を引き継いでいると思います。

彼女の名曲”At Last” はウエディングの様々なシーンで耳にすることが多くなりました。

Miles Davis / Nefertiti

Friday, January 20th, 2012

1968 Released

今は亡きジャズ・トランペッターの最高峰、マイルス・デイヴィスが1968年にリリースし、ビルボードのジャズ・アルバム・チャートで最高8位を記録した作品。実際はチャートの順位なんて一般的な評価なので、それはよいのだが、まず紹介したいのは以下の魅力的な参加メンバーだ。
Miles Davis – Trumpet
Wayne Shorter – Tenor Sax
Herbie Hancock – Piano
Ron Carter – Bass
Tony Williams – Drums

もしも現在において彼らの演奏を生で見られるなら、いくらまでお金を払うだろう?間違いなく自分の1カ月分の給料位(想像にまかせます)なら払う価値はある。各楽器のエキスパート達がひしめくメンツである。素晴らしい作品であることはジャズ・ファンなら誰でもうなずくだろうが、本作に至ってはマイルス自身が手掛けた楽曲はゼロで大半をウェイン・ショーターとハービー・ハンコックで書き下ろしているろいうのも意外なポイント。

そして何と言っても、この作品の聴きどころはトニー・ウィリアムスのドラミングである。タイトル曲“Nefertiti”に至っては度肝を抜かれるほどダイナミックで芸術的。13歳でプロ入りし、マイルスが仰天してメンバーに加えたのが17歳の時。このアルバムでは23歳を迎え、エネルギーに満ち溢れ創造性が爆発寸前の年頃。ジャズ・ドラムを次のステップへ持ち上げた(と言っても誰も真似できなかったが・・)きっかけとなった作品と私は解釈している。

同年に同メンバーで収録したアルバム「Miles in the Sky」はロン・カーターが電子ベースを、そしてハービー・ハンコックが電子ピアノを弾くことで、フュージョンが象徴するような次世代ジャズの誕生秘話となった作品と言われている。67年にコルトレーンが他界、本作「Nefertiti」(ネフェルティティ)も67年に収録されていることから、大きく音楽史が動いた時代であることは歴史が証明している。

Akiko / Girl Talk

Thursday, June 2nd, 2011

2001 June Released

 
Akikoさんの衝撃デビューから早10年。今でも忘れられないのですが、彼女のことを初めて知ったのが、私の生活がまだ苦しかった(今でも結構苦しいが・・・)トラックドライバーで生計を立てていた時期。運転中にラジオから彼女のインタビューが流れて、今後デビューを予定していると話していた。当の自分はミュージシャンの夢をあきらめ、家族にメシを喰わせる術を模索していた時期でもある。しかも日本人で初となるジャズの名門ヴァーヴからリリースをするということで、長年ジャズを聴いていた自分にとっては興味を抱かずにはいられないシンガーとなった。

丁度この数年前に、現在も世界的に有名なジャズ・ピアニストのK氏が私のライブ・サポートをしてくれたのですが(本当に感謝しています)、そのピアニストがAkikoさんのライブ・ピアニストでもある繋がりでAkikoさんのライブに訪れる機会がありました。場所の名前は覚えていませんが、小さいライブハウスで休憩をはさんで1時間半くらい歌ったと思います。まだアルバムは聞いていませんでしたが、スタンダード曲も多かったので、ほとんどは理解できました。休憩中に遊びに行くとAkikoさんが煙草を吸っていたので、びっくり!少なくとも自分のまわりのシンガーに煙草を吸っている人はいませんでしたので・・・

回想はここまでとして、この記念すべきデビュー・アルバム「Girl Talk」は私も大好きなHenri Renaud氏がプロデュース。Akikoさんの個性を素晴らしい状態で引き出しているのは、彼の長年の五感が成せる技だと思いました。どの曲も好きなのですが、個人的に響いたのは彼女が歌う“Crazy He Calls Me”、“Sweet Georgia Brown”、そしてライブでも記憶に残った変則ビートの“Fly Me To The Moon”でしょう。

仕事上ではこのアルバムを含め、彼女の曲は結婚式の歓談にもよく使います。私が現在までも、そしてこれからも大好きな日本人アーティストの一人です。

おすすめ度
☆☆☆☆
 

Esperanza Spalding / Chamber Music Society

Wednesday, March 2nd, 2011

Aug. 2010 Released

2011年のグラミー賞授賞式は予想を覆す場面を多数目の当たりにしたが、恐らく「Best New Artist」ほど世界を仰天させたシーンは他ならないだろう。ノミネート時には今回ご紹介するEsperanza Spalding(エスペランサ・スポルディング)をはじめJustin Bieber、Drake、Florence & The Machine、Mumford & Sonsの5組が候補にあがっていたが、当初は誰もがジャスティンとドレイクの一騎打ちになるだろうと予想していた。が、実際に発表された勝者はジャズ界の新生でありながらも一番勝者の予想から遠ざかっていたEsperanza Spalding本人だった。

これに対し賛否両論様々な意見が飛び交ったが、ある音楽界の著名人は新聞の一面を買い取って講義の文面を掲載した。グラミー審査委員会はもっと公平かつ客観的な立場で音楽界を評価するべきだという意見や新人賞の受賞を逃したジャスティンのファンからは、彼女の存在がネット上で痛烈な攻撃を受けたとの報告もあるようだ。

彼女の音楽をノラ・ジョーンズと引き合いにかける評論家もいるようだが、私の考えではそれは全く次元の違う話だと思う。唯一同じことはジャズのボーカルであるということだけ。ノラ・ジョーンズが誰からも共感されるアイドル的シンガーであるのに対し、Esperanzaは様々な楽器や音楽理論を用いて自身を表現する芸術家であり、ただの歌い手ではない。もっと率直に言うと「ポップではない」の一言に尽きる。アート性が限りなく際立っている分、わかりにくいのだ。

若干20歳で世界で最も音楽的に格式の高いバークリー音楽院を卒業し、翌年にAyva Music Ayva Musicより自身のリーダー作「Junjo」にてデビュー。翌年2007年はStanley Clarkeとの共作を発表、08年は2作目となる「Esperanza」のリリース、09年はオバマ大統領がノーベル平和賞を受賞した式典にて名誉たるコンサートに出演するなど、これまでの活動が目まぐるしいほど忙しかったことは確かだ。

この度グラミー・アワードで評価を受けた「Chamber Music Society」は2010年8月にリリース後、再び脚光を浴び2011年3月5日付けのビルボード・アルバム・チャートで自己ベスト記録の34位をマークした。

現在若干27歳(2011年3月時点)数少ない若きアメリカの芸術家であり、ジャズ・ミュージシャンである彼女の音楽が、今後どのような変化を遂げていくのか?期待と末恐ろしさを同時に抱え、見守っていくのみである。

おすすめ度
☆☆☆☆

Kem / Intimacy: Album III

Tuesday, August 31st, 2010

Aug. 2010 Released

05年にリリースしたアルバム「AlbumⅡ」を最後に、音沙汰が全く途絶え、個人的に大好きなアーティストだけに非常に悲しい思いをしていた。が、驚くことに、この度沈黙の3作目をリリース。「Intimacy: Album III」と名付けられたアダルト・コンテンポラリーの真髄、Kemの魅力に迫ってみたい。

本アルバムは2010年9月4日付けのBillboard 200アルバム・チャートにて初登場2位という快挙。もちろん、彼が持っている記録を塗り替える最高位となったのだが、この背景にTV番組などでのプロモーションがあったのか、または何か大きなバックグラウンドがあるのかは定かではない。知っている方がいたら、是非教えて。。。

この2位という記録が何故すごいかと申しますと、同週に発売されているTrace Adkinsというアメリカでは絶大な人気を誇るカントリー・シンガーの新作「Cowboy’s Back in Town」を抑え、更には80年代より精力的に活動しているヘヴィーメタルバンドIron Maiden の「The Final Frontier」も抑え、ロックチャートでは1位、過去にグラミーノミネート経験もあるRay Lamontagne さえも抑えました。

今まではゲストを招いたりすることは無かった彼の作品だが、今回はJill Scottをスピーチ(ボーカルではない)に迎えている他、マービン・ゲイの71年発表「What’s Going on」のプロデュースを務めたDavid Van dePitt が参加。彼はデトロイトのオーケストラを率いた本作からのシングル「Why Would You Stay」のストリングス・アレンジを務めているが、この曲がなんとも素晴らしいバラード曲である。

ジャズ的な要素、ラテン系のリズム・セクション等、これまでの作品と良い意味で変わらない、そして心底癒しを与えてくれる情緒あふれる歌詞、一日の疲れを忘れさせてくれるような音楽・・・今の科学でさえ、これ以上に効く薬はありません。

おすすめ度
☆☆☆☆☆

RH Factor(Roy Hargrove) / Hard Groove

Monday, March 29th, 2010

May. 2003 Released

2003年5月に発売されたジャズ・トランペッター、Roy Hargroveのプロジェクト「RH Factor」の魂心作。作品内ではトランペットやフルーゲルの演奏はもちろんのことトータル的なプロデュースやバックグラウンド・ボーカルに至るまで彼の手によるメスが入っている。

89年のデビューよりハードバップ界の次世代ジェネレーションを牽引してきた彼がヒップ・ホップ界の大御所を集めて、実験的な取り組みをした作品となり話題を集めた。

2000年頃をさかえにフィリー発ネオソウルの火付け役ともなったジャジージェフ率いるタッチ・オブ・ジャズに参加していた経緯もあり(ゴメン、確か自分の記憶ではそうだったハズ)この作品に集まったメンバーのErykah Badu、Common、D’Angelo、ベーシストのPino Palladinoなどソウル・スクワッドの面々が勢ぞろい。そして一世を風靡した元Zhane(ジャネイ)のRenee Neufvilleや地道な活動を続けているAnthony Hamilton、ラッパーのQ-Tip、Meshell Ndegeocello等々ジャズとヒップ・ホップ/R&Bの本格的な融合を試みた、今の音楽業界が忘れているアート性の追求、より良い音楽を創作しようというRoy 氏の取り組みが、ジャズのみならずヒップ・ホップファンをもワクワクさせた作品である。

そして、私が生涯で見たライブの中でも確実に5本の指に入るショーケースが、この時のツアーで青山のブルーノートにて目撃した彼等の姿。言葉は良くないが「オシッコが漏れそう」というのが一番わかりやすい説明だと思う。

今まで結構なライブを見てきたが、あんな体験は最初で最後かもしれない。一番驚いたのは、あり得ないことにツイン・ドラム(ドラマーが2人)で2人は息を殺すような微妙なトーンも全く同じタイミングでプレイしており、ドラムの音はひとつなのにステレオになっている大迫力で聞こえるのだ。

このようにハラワタにビシビシ響く迫力のサウンド、完成されすぎたメンバーひとりひとりのアレンジ、限りの無い空のように次々と自由に飛び交う楽器のソロ・パート・・・・

「これだから音楽は面白い!」と感じさせてくれた、本当に素敵なライブだったことを今でも鮮明に覚えており、このアルバムの存在は決して忘れることが出来ない。

おすすめ度
☆☆☆☆

John Coltrane / Giant Steps

Thursday, February 18th, 2010

May. 1959 Released

今回は初めてジャズの紹介をするのだが、実は自分が10代の時に一番魅了された音楽が1950年代から60年代後期にかけて巻き起こったモダン・ジャズのジェネレーションだ。そして、今回紹介するのは私が一番最初に買ったジャズのレコード(レコード単体で挙げれば「泳げたいやき君」だが・・)ジョン・コルトレーンのジャイアント・ステップスで、当時はチンプンカンプンでわけのわからない音楽。あやうく燃えないゴミへと分別してしまうところだった。当時私は16歳だったが、理解しようと無理やり聴き続け、サントリーREDをストレートで飲みまくったが、それでもダメだった。

まるでタネの明かされた手品のように、それが一気に理解できたのが翌年にニューヨークに訪れた時のこと。激しく脈を打つ鼓動のように流れるリズム・・・ニューヨークという街全体が心臓部となりシンバルやウッドベース音、サックス音がグルグルと血管のように循環する。アメリカの片田舎や、ましては日本ではとうてい生まれる背景がない彼のサウンドがニューヨークへ行ったことによって鮮明に映り始めると、そこから一気にコルトレーンの世界へ浸かっていった。

海賊盤も含めると、数多くの作品が出回る中、コルトレーンの転機となっていると考えられるのが「ジャイアント・ステップス」であり、それまでのジャズの歴史に縦線を引くうえでも、このアルバムが時代に貢献している比重は大きい。近々までマイルスのバックで地味にブローしていた人物とは同一とは思えないほど飛躍し、このレコーディングの行われた1959年の前年には「The Last Trane」という、このアルバムのサウンド性に道しるべを仕掛けたアルバムをリリースしているが、「Giant Steps」によって試行錯誤された独自の理論が身を結び、その後のコルトレーン・サウンドを決定づけ、他界する60年代後半のフリージャズへと地図を成形している。

とてつもなく早いコード進行、刻みにくいリズム、口ずさめないメロディーなど一般のポピュラーな音楽とはかけ離れ、まるでピカソが描いた絵画のように、コルトレーンのジャズが最も芸術性を帯び、自分の音楽を信じて突き進んでいく皮切りとなった記念すべきアルバムである。

それまでモダン・ジャズでも比較的ソフトなイメージだったピアニスト、Tommy Flanaganや、長期に渡ってコルトレーンを支えたベースのPaul Chambersが、当時どんな気持ちでこのアルバムの制作に携わったのかを考えると、非常に興味深い。(ドラムスのArt Taylorは、まだ新鋭的なことにチャレンジするタイプだったと考えるが・・・)スポーツに言いかえれば、卓球の選手が明日から大雨の中でテニスの試合に出るくらい過酷なはずだ。
収録曲にはタイトルソングのGiant Stepsを始め、Countdown、Syeeda’s Song Flute、Naima、Mr. P.C.とどれを選んでも独創性に溢れた世界観に広がり、今現在こうして聴いていても、そして今後50年後に聴いたとしても全く色あせることがない生きた音楽として残っていくに違いない。

おすすめ度
☆☆☆☆☆