Archive for March, 2010

RH Factor(Roy Hargrove) / Hard Groove

Monday, March 29th, 2010

May. 2003 Released

2003年5月に発売されたジャズ・トランペッター、Roy Hargroveのプロジェクト「RH Factor」の魂心作。作品内ではトランペットやフルーゲルの演奏はもちろんのことトータル的なプロデュースやバックグラウンド・ボーカルに至るまで彼の手によるメスが入っている。

89年のデビューよりハードバップ界の次世代ジェネレーションを牽引してきた彼がヒップ・ホップ界の大御所を集めて、実験的な取り組みをした作品となり話題を集めた。

2000年頃をさかえにフィリー発ネオソウルの火付け役ともなったジャジージェフ率いるタッチ・オブ・ジャズに参加していた経緯もあり(ゴメン、確か自分の記憶ではそうだったハズ)この作品に集まったメンバーのErykah Badu、Common、D’Angelo、ベーシストのPino Palladinoなどソウル・スクワッドの面々が勢ぞろい。そして一世を風靡した元Zhane(ジャネイ)のRenee Neufvilleや地道な活動を続けているAnthony Hamilton、ラッパーのQ-Tip、Meshell Ndegeocello等々ジャズとヒップ・ホップ/R&Bの本格的な融合を試みた、今の音楽業界が忘れているアート性の追求、より良い音楽を創作しようというRoy 氏の取り組みが、ジャズのみならずヒップ・ホップファンをもワクワクさせた作品である。

そして、私が生涯で見たライブの中でも確実に5本の指に入るショーケースが、この時のツアーで青山のブルーノートにて目撃した彼等の姿。言葉は良くないが「オシッコが漏れそう」というのが一番わかりやすい説明だと思う。

今まで結構なライブを見てきたが、あんな体験は最初で最後かもしれない。一番驚いたのは、あり得ないことにツイン・ドラム(ドラマーが2人)で2人は息を殺すような微妙なトーンも全く同じタイミングでプレイしており、ドラムの音はひとつなのにステレオになっている大迫力で聞こえるのだ。

このようにハラワタにビシビシ響く迫力のサウンド、完成されすぎたメンバーひとりひとりのアレンジ、限りの無い空のように次々と自由に飛び交う楽器のソロ・パート・・・・

「これだから音楽は面白い!」と感じさせてくれた、本当に素敵なライブだったことを今でも鮮明に覚えており、このアルバムの存在は決して忘れることが出来ない。

おすすめ度
☆☆☆☆

Omar / For Pleasure

Wednesday, March 24th, 2010

May. 1995 Released

本名Omar Lye-Fook UKソウルのインディーズ・シーンでは知る人ぞ知るベテラン。日本にも何度か来日し、多くのファンを囲っているが北米での知名度は残念ながら低い。音楽業界を取り巻く環境を比較した時にアメリカ人とイギリス人では、後者の方が古くからの伝統的なソウルミュージックに対する敬意が深く、オマーもまたその一人であり、古き良き70年代ソウルをベースとした個性的なフューチャーミュージックを創造する第一人者であると確信している。

彼とは対面インタビューや電話でのインタビューを通じて、楽曲を制作する時のインスパイア法について尋ねたことがあるが、その手法は驚くもので、彼の第一印象からは想像できない聖域でインスピレーションを感じ取っているのだという。(残念ながら日本の公のネット上では、その方法についてお伝えできない。)

今回紹介する作品は、個人的にはCDに穴が開くほど聞き込んだアルバム「For Pleasure」。1994年彼が25歳の時にリリースした3作目で、その後のオマーの行くべき道しるべを示したターニングポイントにあたる作品とも言えよう。

制作はもちろん、これまでのように彼がトータルに手掛けていることは変わりはないが、参加したソングライターにレオン・ウェアのクレジットが見られる他、同郷の女性シンガーでミーシャ・パリス、ジャズから第一線のアーティストまで現役でサポートしているベーシストのネイザン・イースト、同じくUSのスタジオミュージシャンでベテラン・キーボーディストのデヴィッド・フランク、UKの名ソングライター、レイ・ヘイデンなどサポート役ながらスゴ腕をずらりと揃っている。私が思うにはオマーの独創性を伸ばしながらも、やわらかくブレンドするには絶好のメンバーだったと考える。

その後も素晴らしいアルバムをリリースし続けているが、2010年3月時点の現在では数年間音沙汰なしといった具合でやや心配・・・誰もマネのできないクリエイティブな音楽が次に届けられるのはいつだろう?

おすすめ度
☆☆☆☆

Usher / Confessions

Wednesday, March 17th, 2010

Mar. 2004 Released

2010年3月に待望の6作目リリースを控えている世界のスーパースター、アッシャー・レイモンドさん。78年10月14日生まれ、テネシー州の Chattanooga(チャタヌガ)という田舎街出身です。14歳でL.A. Reid のLa Faceと契約。94年、彼が16歳の時に「Usher」というアルバムを引っさげデビュー。アルバムの最高位は167位って、まぁ今だったら信じられことです。

具体的な彼のバイオグラフィーは省略させていただきますが、年少期はごく普通な黒人家庭のように、日曜日には必ず家族で教会に通い、クワイアー(聖歌隊)に参加するような環境で育ったことは間違いないでしょう。Usherの少年時代の歌っている姿をビデオで見たことがありますが、こぶしをガンガン使って派手に歌いまわすこと・・・プロになると、あまり歌いまわすことは良くないとされているので(メロディーのキャッチーさを重要視する理由で)デビュー後のスタイルは一新しましたが。

さて、今回は2004年にリリースした「Confessions」を取り上げましたが、97年の「My Way」が出世作となり、01年のアルバム「8701」でグラミーを獲得しスターの座に、「Confessions」ではアルバム・チャートやシングルもトップへ送り込み、誰もが認める不動のスーパースターという地位を確立。Lil JonとLudacris をフィーチャーした「Yeah!」は世界的に2004年のテーマソングとなりましたな。「Caught Up」や「Burn」もヒットチャートで大騒ぎしましたが、個人的にこのアルバムで一番好きなのは「Simple Things」という歌。人生の教訓が詰まった素敵な歌です。

前後があるので少しわかりずらいですが、歌詞のフックの部分を抜擢するとこんな歌詞になります。

It’s the simple things in life we forget
You hear her talkin’ but don’t hear what she said
Why do you make something so easy so complicated
Searching for what’s right in front of your face
But you can’t see it

人生の中でいたってシンプルなことって忘れがち・・・
君は彼女の話を聞いているけど、何を言ってるのかは耳に入ってない
どうして問題をそんなに複雑にして
結局は彼女の大切な存在を気付かないままでいるの?

おすすめ度
☆☆☆☆

Baby Face / For the Cool In You

Wednesday, March 10th, 2010

Aug. 1993 Released

1959年インディアナポリス生まれ、本名Kenneth Brian Edmonds。
ファンク界のカリスマ・ベーシストBootsy Collinsのバック時代に彼からBaby Face(ベイビーフェイス)と名付けられたのは、あまりにも有名な話。ミュージック・ビジネス界で大きな成功を収めているL.A. Reidと共にThe Deeleというバンドで7年間活動し、数曲のヒットを放つ。その後のプロデュース活動においての活躍ぶりは皆さんの知る通り。90年代のR&Bシーンはベイビーフェイスが作った楽曲で溢れかえり、完全に90年代前半をジャックした。テディライリーと張り合い、非常に良い時代を築き上げ、シーンの発展に貢献したことは今後の歴史に語り継がれるだろう。

今回ピックアップしたのは、その絶頂期であった93年にリリースしたソロ3作目「For the Cool in You」という作品。前年にToni Braxton(トニ・ブラクストン)のデビュー作「Another Sad Love Song」を手掛け、その後長年に渡って彼女のイメージを失恋の女として色付けしてしまった。トニは今年2010年にカムバックしそうなニュースが飛び込んでいるが、長い歳月が過ぎた今でもそのイメージから脱却することは難しいだろうな~

このアルバムを作っていた最中にも膨大なプロデュース依頼が山積みになっていたはずだが、その中で作り上げた本作の素晴らしさは信じ難いものがある。完全に時代を超えて引き継がれるだろう「When Can I See You」を始めとするラブソングの数々。ちょっと残念なのはJoe Cockerの「You are so Beautiful」カヴァー曲だが(あの曲でジョーを凌ぐ人はいないので・・・)それでも当時はかなり新鮮だった「Never Keeping Secrets」に見られる歌詞のノセ方は(うまく説明できないが、メロディーに貼りつく感じ)はその後様々なアーティストがマネしようとした。

アルバム自体は最高位で16位とセールス自体は良くないが、94年のグラミーアワードで本作は高い評価を受け「Best Male R&B Performance」に輝く。その直後は手掛けるBoyzⅡMenやTLCで爆発的、かつ記録的なヒットのラッシュ!彼の人生でもっとも華やかな時期であったことは間違いない。

おすすめ度
☆☆☆

Black Box / Dreamland

Tuesday, March 2nd, 2010

May. 1990 Released

多分、自分の世代が遊んでいたこ80年代後半のクラブで良く耳にしただろう、Black Box(ブラックボックス)のアルバム「Dreamland」を今回は取り上げてみた。近所の中古CD屋で数百円で売っていたのだが、自分にとってはそれ以上の思い出と価値がある。

アルバムからは Everybody Everybody をはじめ I Don’t Know Anybody Else そして Strike It Up がアメリカのダンス・チャートで1位となった他、世界的にもチャートの上位を独占した90年代を象徴するダンス・ヒットが1枚のアルバムに詰まっている。

私がニューヨークに住んでいた頃は週に7日間クラブへ通っていたが、Loletta Hollowayをフィーチャーした収録曲の「Ride on Time」はアンダーグラウンドのシーンでもソコソコ支持を得ていた気がする。それ以外はメジャーな大箱やセントラルパークなどの公園でローラースケートをする集団がよく使っていた曲が多い。流行った時期も夏だったので、ニューヨークでは夏のクラブ・ソングという印象が強かったのではないだろうか。

グループはイタリアンの3人組でDJのDaniele Davoli、keyboard のMirko Limoni、クラリネットの先生でもあるValerio Sempliciから成るトリオにシンガーでモデルのCatherine Quinol (a.k.a. Katrin)がフロントを務める・・・という設定だったが、後にシンガーが看板だけだったことが判明。当時Everybody Everybodyのカセット・シングルをジャケ買いした自分も大きなショックを受けたのを覚えている。

クレジットはされなかったが正式なシンガーの名前はMartha Washという太ったおばちゃんで、同じ年に一世を風靡したC+C Music Factoryの「Gonna Make You Sweat (Everybody Dance Now)」を覆面で歌った人物でもある。看板シンガーは口パクだったことを認め、すべての事実はマスコミを通じて明かされたが、C+C Music Factoryの看板シンガーは、テレビで自分も本当は歌えることを必死に証明していた姿が忘れられない。

そんなことが許された時代の「思い出」という意味と、若き頃の夏の記憶に乾杯して、おすすめ度は少し高めに設定させてもらう。

おすすめ度
☆☆☆☆☆