Archive for February, 2010

Conya Doss / Love Rain Down

Wednesday, February 24th, 2010

Dec. 2006 Released

オハイオ州クリーブランド出身の女性シンガーソングライター。2002年に「A Poem About Ms. Doss」でデビュー。以後2004年に「Just Because」、2006年に「Love Rain Down」、2008年に「Still」の合計4作品をリリース。3作目まではEric Robersonなど、良質のR&Bアーティストを送り出しているUKの大手インディーズ・レーベルDome Recordsより作品のディストリビューをしていたが、08年になって自主レーベルに切替わり、現在は地元を中心にライブなど音楽活動を行っている模様。自身の持つ記録はBillboardのR&Bチャートで08年に「What I’d Do」がマークした79位が最高。認知度という意味ではアメリカやヨーロッパ、日本などの一部のマニアックなソウル・ファンのみに流通した存在といえる。話は変わるが、何にでもマニアック(もしくはコア)なファンというのは一般の流行を追う派と比べ、裏切ることをしない。かつては私も、彼女の存在を知ったデビュー作からは、その後の作品の良しあしに関わらず、アルバムを購入し続け、コーニャの成長過程を見守っている。そして、今回紹介する「Love Rain Down」を初めて聴いた時は、本気でクリーブランドまでライブを見に行こうかと考えたほど惚れ込み、まるでミシュランの三つ星状態で彼女を欲し、彼女のサウンドを今すぐ味わいに行きたいと熱望したのを覚えている。

彼女の音楽を当時もてはやされていた言葉で例えると「ネオ・ソウル」というのが、ありきたりの表現なのだが、ひねくれ者の自分にはどうしてアメリカを含めたライナーノートが、そのカテゴリーに無理矢理入れたがるのかが理解できなかった。初めてこのアルバムに針を落とした時に、よく知っている暖かいサウンド感を感じたのだが、後にプロダクションを調べると、前作に引き続き制作の大黒柱となっているMyron(マイロン・デイヴィス)とJosh Honigstock(ジョシュ・ホニストック)から成る、ジャズ理論を元にソウルの温度計を2.5度上昇させる特有のサウンド感をもったチームがソングライティングを担当していることに気づく。生楽器を多用し、暖かくやさしく響き渡るメロディーの裏側に、体内に蓄積された彼女のエネルギーが静かな爆発を繰り返す様が映し出され、オーディエンスを見事に金縛りにする。

聴けば聴くほど新しい発見に満ち(それが本当の音楽でしょう!)、今こうやってこのレビューを書きながら聴き返しても全く時代を感じさせない。そう思うと、やっぱり生で彼女の音楽が見たくなってきた!今度こそ行っちゃおうかな~マジで・・・ ・

このアルバムで一番のお気に入り「Tell Me Why」のライブです↑

おすすめ度
☆☆☆☆

John Coltrane / Giant Steps

Thursday, February 18th, 2010

May. 1959 Released

今回は初めてジャズの紹介をするのだが、実は自分が10代の時に一番魅了された音楽が1950年代から60年代後期にかけて巻き起こったモダン・ジャズのジェネレーションだ。そして、今回紹介するのは私が一番最初に買ったジャズのレコード(レコード単体で挙げれば「泳げたいやき君」だが・・)ジョン・コルトレーンのジャイアント・ステップスで、当時はチンプンカンプンでわけのわからない音楽。あやうく燃えないゴミへと分別してしまうところだった。当時私は16歳だったが、理解しようと無理やり聴き続け、サントリーREDをストレートで飲みまくったが、それでもダメだった。

まるでタネの明かされた手品のように、それが一気に理解できたのが翌年にニューヨークに訪れた時のこと。激しく脈を打つ鼓動のように流れるリズム・・・ニューヨークという街全体が心臓部となりシンバルやウッドベース音、サックス音がグルグルと血管のように循環する。アメリカの片田舎や、ましては日本ではとうてい生まれる背景がない彼のサウンドがニューヨークへ行ったことによって鮮明に映り始めると、そこから一気にコルトレーンの世界へ浸かっていった。

海賊盤も含めると、数多くの作品が出回る中、コルトレーンの転機となっていると考えられるのが「ジャイアント・ステップス」であり、それまでのジャズの歴史に縦線を引くうえでも、このアルバムが時代に貢献している比重は大きい。近々までマイルスのバックで地味にブローしていた人物とは同一とは思えないほど飛躍し、このレコーディングの行われた1959年の前年には「The Last Trane」という、このアルバムのサウンド性に道しるべを仕掛けたアルバムをリリースしているが、「Giant Steps」によって試行錯誤された独自の理論が身を結び、その後のコルトレーン・サウンドを決定づけ、他界する60年代後半のフリージャズへと地図を成形している。

とてつもなく早いコード進行、刻みにくいリズム、口ずさめないメロディーなど一般のポピュラーな音楽とはかけ離れ、まるでピカソが描いた絵画のように、コルトレーンのジャズが最も芸術性を帯び、自分の音楽を信じて突き進んでいく皮切りとなった記念すべきアルバムである。

それまでモダン・ジャズでも比較的ソフトなイメージだったピアニスト、Tommy Flanaganや、長期に渡ってコルトレーンを支えたベースのPaul Chambersが、当時どんな気持ちでこのアルバムの制作に携わったのかを考えると、非常に興味深い。(ドラムスのArt Taylorは、まだ新鋭的なことにチャレンジするタイプだったと考えるが・・・)スポーツに言いかえれば、卓球の選手が明日から大雨の中でテニスの試合に出るくらい過酷なはずだ。
収録曲にはタイトルソングのGiant Stepsを始め、Countdown、Syeeda’s Song Flute、Naima、Mr. P.C.とどれを選んでも独創性に溢れた世界観に広がり、今現在こうして聴いていても、そして今後50年後に聴いたとしても全く色あせることがない生きた音楽として残っていくに違いない。

おすすめ度
☆☆☆☆☆