Archive for August, 2009

Kem / Kemistry

Monday, August 31st, 2009

Feb. 2003 Released

ナッシュビル生まれ、デトロイトを拠点に活動するR&Bアーティスト。ジャジーでこれまでにないスムースなミディアム・スロー音源を特徴に、09年時点で通産2枚のアルバムをリリースしており、今回紹介するのはデビュー作となる。アルバムをリリースした当時は、あまりの完成度の高さに驚き、私自身、某紙のレビュー記事にて賞賛を送ったことを覚えているが、実はこのアルバムはアマチュアとして活動していたKem(ケム)が、地元の美容院やレストランなどに売り込み自らの手で10000枚を売り上げたことで噂になり始め、ついには2003年にモータウンからデビューするまでに至った作品だ。なかなかの苦労人で路上生活まで送った経験を持つ彼は、自身の音楽についてこう語る。「ボクの音楽はヒットチャートの一線に並ぶような音楽じゃないけど、ボクの音楽を必要に感じてくれる人に届けばいいんだ。」

チャートの動向を伺うと、アルバムをリリースした03年にBillboard の「Heatseekers」(※実際のチャートインには関係なく、ランク外のアーティストで最も期待度の高いアルバムを計るチャート)で1位を獲得後、リリースから多少の時差を生じて翌年のR&Bアルバム・チャートで14位という高記録を獲得した。制作は自身によるセルフプロデュースで、アマチュア時代に制作した音源10曲をそのまま利用。どの曲もデビュー作の領域を超え、彼の人生=苦悩を表現したアーティスティックな作品となっている。生楽器をメインに洗練されたサウンドと彼のクリアな歌声は聴く回数を増すごとに魅力が募る。忙しない毎日を送る我々に癒しを与える無二のコンテンポラリーR&Bサウンドとして、普段の生活の中で彼の音楽と付き合っていただきたい。

おすすめ度
☆☆☆☆

Amel Larrieux / Infinite Possibilities

Monday, August 24th, 2009

Feb. 2000 Released

Groove Theory(グルーヴ・セオリー)名義での活動を終えリリースしたAmel Larrieux (アメール・ラリュー)の記念すべきソロアルバム。ビルボードの総合アルバム・チャート最高79位、R&Bアルバム・チャートで21位を記録した。

グルーヴ・セオリーは東海岸を中心に比較的コアなR&Bファン層を持つグループで、95年のアルバム「Groove Theory」から出世作「Tell Me」が全米シングルチャート5位を記録、他にも数曲をヒットさせた。2作目のアルバムを制作中にグループは解散。4年のブランクを経てリリースに至ったのが、この作品というわけだ。2009年8月現在は通算4作のアルバムをリリースしているが、そのアルバムも彼女のオリジナル性を重視した音楽的要素を追求した作品、ソウルでもジャズでもない、業界随一の個性を放っている。

この作品の素晴らしいところは、彼女自身によるセルフプロデュースもとで芽を育ませている個々の楽曲群。ヴォーカル・ラインはインスピレーションで型取られ、アメールの思惑通りに右へ左へと旋律がカーヴする。既に夫となっていた共同制作者ラルー氏のサポートも計り知れないところだが、母親という役目を両立し、アーティストしての本能を開花させた苦労作だ。

アルバムからシングルカットされた「Get Up」は、以前から交流のあったRoots(ルーツ)の影響を思わせたが、その後のリリースを回想していくと、あの音こそが彼女の持つ切り札のカードであり、持ち前のスパイスであることに気付く。曲はビルボード・チャートで97位と商業的には決して良い結果ではなかったが、そもそも彼女の音楽自体がそのような道を選択していない上に、そこにしがみつくファンが逆に彼女を手放すことはない。

おすすめ度
☆☆☆

Yolanda Adams / Believe

Wednesday, August 19th, 2009

Dec. 2001 Released

コンテポラリーゴスペル界のカリスマ、ヨランダ・アダムスの10作目、彼女が37歳の時にリリースした作品。アルバムに収録されているファースト・トラック「Never Give Up」は、筆者が落ち込んだ時に幾度となく助けられた素晴らしい曲、歌の高揚感が天にも届きそうな勢い、勇気を与えてくれる曲なので、是非皆様にも歌詞をしっかり聞き取ってもらい、音楽の中に入り込んでいただきたい。

ゴスペル音楽自体がパワフルな音楽であるように、彼女が歌に注ぐ情熱(と言うよりは神に捧げる情熱)は底知れぬモノが伝わるが、彼女こそはアメリカの多くの若く無関心なクリスチャンに、歌を通じてわかり易く現代キリスト教の科学を紐解いた第一人者だろう。後に彼女の存在を通じて続いたコンテポラリーゴスペルのファロアーが次々に世に出て行ったことを考えても、その実証が明かされている。

アルバムは2001年のゴスペル・アルバム・チャートで堂々の1位、コンテンポラリー・クリスチャン・チャートでも2位を記録。R&Bアルバム・チャートでもこの時代にしては異例の7位まで登りつめた作品だ。意外にも制作にはJimmy Jam&Terry Lewis(ジャム&ルイス)が曲を提供、彼らの知られざる仕事ぶりがひたすら輝きを放っている。他にもShep Crawford(シップ・クロフォード)やWarryn Campbellなどの一流揃い。ゲストに大御所カレン・クラークとのデュエットも有り。

アルバム後半は泣きの2曲がオススメで、10曲目の「I’m Gonna Be Ready」(こちらもジャム&ルイス作)そして彼女の娘について歌った「Darling Girl」は、親なら誰でも感動してしまう暖かい曲です。

おすすめ度
☆☆☆☆

Whitney Houston / Whitney Houston

Wednesday, August 12th, 2009

Oct. 1985 Released

US音楽業界のドンと言っても過言ではない、Clive Jay Davis(クライヴ・デイヴィス)に見出され、このアルバムをデビュー作に80年代の象徴となり、90年代にはマイケルなど共にべテランの域に、2000年に入ると大御所へと成長した元祖ソウル・ディーヴァ。筆者がオン・タイムで聞いた初めてのブラコン(ブラック・コンテンポラリー)の大作がコレでした。

ホイットニー・ヒューストンがリリースしたアルバムは全て聴いていますが、このデビュー・アルバムでは、まだ若い彼女が純粋な気持ちでストレートに歌う姿が鮮明に映し出されています。その後は時代と共に彼女の音楽も変化して行きましたが、当時22歳で成し遂げたこの名作は永遠に語られることでしょう。

アルバムからは4曲のビック・ヒットが生まれましたが「How Will I Know」、「Saving All My Life For You」、「Greatest Love Of All」の3曲が全米のシングル・チャートで1位を獲得、「You Give Good Love」も最高3位、アルバム自体も1位を記録し、グラミーアワードでは「Saving All My Life For You」がBest Female Pop Vocal を獲得するという快挙を成し遂げました。余談ですが、この曲のオリジナルは Marilyn McCooとBilly Davis Jr. が70年代に書いた楽曲にホイットニーが新たな命を吹き込んだとされています。

その他にもジャーメイン・ジャクソンがデュエットした楽曲が2曲、テディ・ペンターグラスとのデュエットでは事前にヒットとなり、元々話題性に富んだ作品ではありましたが、ナンと言っても心に残る彼女の歌声が人々を引きつけ魅了したことは間違いないと思います。

2009年の8月現在で彼女は46歳。9月には新作「I Look to You」がリリースされます。音源が入り次第ソウルピーナッツのNew Releaseコーナーにて紹介させていただきます。

おすすめ度
☆☆☆☆

Kenny Lattimore / From the Soul of Man

Tuesday, August 4th, 2009

Oct. 1998 Released

1998年に発売されたこのアルバムはビルボードのアルバムチャート71位という、商業的には成功した作品ではなかったが、一部のソウルファンにとっては心に残るアルバムとなった。私個人的にも98年から今までお付き合いしているアルバムだが、聞き込むほどに味が出てくるような、素晴らしい作品だと強く思う。

まずはこの作品に携わっている制作陣に注目したいのだが、これが本当に素晴らしい!今では考えられない組み合わせだが、フィリーソウルのプロデューサー群、まだタッチオブジャズと名乗っていた頃のヴィダル・デイヴィスとキッパージョーンズ(彼自身は元TEASEのメンバーで1枚のソロ作をリリースしている、知る人ぞ知るアーティスト)が半分、他にもバリーイストモンド、ダリル・シモンズ、ジェイムス・ポイザー等の名だたる面々・・・ アルクーパー作の「I Love You More Than You’ll Ever Know」はダニーハザウェイのカヴァー、そこでオルガンを弾いているのが、なんとフランク・マッコム!(ダニーハザウェイの再来と言われている人物です)と、驚きを隠せませんな。

非常に地味な作風ながらも恵まれた制作陣と、ナンと言っても彼の優れた歌唱力がアルバムを通じて、完成度の高い歴代名作を生み出した・・・と言ってもこのアルバムは過小評価され過ぎですが。
ハイライトはオーケストラを起用したゴスペル曲「Well Done」。歌詞は疑問を投げかけ、そしてアレンジがとにかく美しい。ボーカルの旋律も、ある領域を超えた美しさ、音楽が終わった後には心が空っぽになってしまう・・

ブロードウェイ出身のへザーヘッドリー(このレビューでも紹介済みです)とのデュエット、ライオンキングの「Love Will Find a Way」で締めくくり、一本の大作映画を見終えた時のような気持ちの良さでスッキリ。こりゃ、アンコールでもう一回最初からとなりますよ。

時代を超えて残るアルバムというのは数少ないが、これほどの出来を誇るアルバムがあまり紹介されていないことが悔しくて、こんなブログを書いているのかもしれませんね。。。。

おすすめ度
☆☆☆☆☆